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正義の看守
正義はある時あやまちを犯した。
そのあやまちは、民の目には正義のわがままと映り、公平であることを失った正義は敵だ、罰せられるべきだと湧いた。正義は反論しなかった。
檻の中で正義は問う。
「看守くんは誰の味方?」
「私は法の下僕ですから」
「法は誰の味方?」
「民の味方でありましょう」
「でも、民の正義が法になるんじゃないの?」
看守は考えた。それは確かにそうなのだが、ではなぜ正義は鉄格子の向こうに?
正義が捕らわれているのはなぜだ?
「気づいたかい、世界は狂いだしている」
「けれど、一体……」
「君の力を貸してくれ」
正義は“わがまま”を言う。民の願いを正義の下へ取り戻すために。
正義が伸ばした手を、看守は慎重に握った。
Twitter300字SS企画参加作2015.07.04 「正義」300文字
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